体重・体脂肪と妊娠・生理痛の関係
あるクリニックに「生理が5年くらいないのだけれど、将来は赤ちゃんがほしいから生理をおこしたい」という女性がやって来ました。24歳のAさんです。Aさんは一目見ただけで、「拒食症によるやせの可能性が高いな」と思われました。
頬がこけて目玉が飛び出していて、栄養失調で顔がむくんでいます。鎖骨はむき出しで、手の甲には血管がぼこぼこ浮き出ていました。聞くと身長が164センチなのに、体重が33キログラムしかないのです。決して太っているとはいえない45キログラムあった体重を、自分では「もっとやせなければ」と思い込み、12キログラムも落としていました。
診察のために内診台に乗ってもらうと、おばあちゃんのようなお尻があらわれました。棒のようになった足が二本、ひからびたお尻から出ています。赤ちゃんがほしいといっても、「はたして赤ちゃんを10か月も、おなかのなかで支えていられるのか」、と思ってしまうような体でした。これでは生理が止まってしまうのもあたりまえです。
生理のある女性、つまり、ある程度成熟した女性が体を動かすためには、身長の高い低いにかかわらず、体重が最低でも40キログラムなければいけません。それ以下だと、ふつうなら立っているのがやっとのはずです。心臓を動かしたり、呼吸をしたりといった生命維持のために最小限必要な体重が40キログラムなのです。もちろん生理をおこすためにも、40キログラムは絶対に必要です。
Aさんは体脂肪も5%しかありませんでした。生理をおこすためには少なくとも18%の体脂肪が必要です。これだけ体脂肪が少ないと、ホルモン治療で生理をおこさせることもできません。このAさんは典型的な神経性食思不振症、いわゆる拒食症です。
何かの原因でやせたい、と強く思うあまり、生きていく上で最低限必要な栄養もとらなくなってしまい、どんどんやせていくという病気になっていたのです。